2008年05月15日

Eric Dolphy『The Eric Dolphy Memorial Album』

ドルフィーには2枚の『メモリアルアルバム』がある。

有名なのは、ブッカー・リトル(tp)との双頭コンボで出演した、
ファイヴ・スポットのライブ盤のほう。
《ブッカーズ・ワルツ》の名演で有名ですね。

今回紹介するのは、もう1枚の盤のほう。
前者が、比較的初心者にも親しみやすい内容だとすれば、
こちらはマニア向き。

ドルフィーという特異な才能が浮き彫りになっている音源だ。

特にアルバム収録4曲中、後半の2曲が濃い。
深い。

リチャード・デイヴィスとのデュオの
《アローン・トゥゲザー》は、
ひたすら深く美しい。

この1曲を聴けるだけでも、
『メモリアル・アルバム』の存在価値はあろうというもの。

いや、もう1曲あった。
アルトサックス1本、
彼の研ぎ澄まされたソロ《ラヴ・ミー》も脳味噌の
前頭前野を刺激してやまない演奏だ。

この後半の2つの演奏が“もう1枚の”『メモリアル・アルバム』の目玉だ。

特に《ラヴ・ミー》のアルトソロは、
ドルフィーの想像力と創造力が限界にまで飛翔する。

聴き手は、ドルフィーの美しいアルトサックスに陶酔するのみ。
そして、後に残るのは透明な感動と不思議な余韻。

シャープに飛翔するこのドルフィーのアルトを聴くと、
「きっと阿部薫は、こういうふうになりたかったんだろうなぁ」
と思う。

阿部のアルトは、
ドルフィーへの憧れか、
対抗意識か、
もっとむき出しの生々しさと禍々しさを感じさせるが、
彼自身、このドルフィーのような重力から解放された飛翔感と、空気抵抗の干渉を受けない自由なスピード感を手に入れたかったのだろう。

軽々と吹きこなし、
精神的な重たい余剰物を一切感じさせない透明なドルフィーのアルトと、ひたすら腕力で重力を捻じ伏せようと苦闘する阿部のアルトは、結果的に音の肌触りはまったく異なるものではある。

しかし、このドルフィーのソロプレイを聴けば、
阿部薫のアルトにも
よりいっそう親近感が湧いてくるかもしれない。

昔、中村あゆみの《翼の折れたエンジェル》という歌があったが、
2本の翼で天空を駆ける天使がドルフィーだとすると、
阿部のアルトは、まさに翼の折れた天使の悲痛な叫びなのかもしれない。

そこにシンパシーを抱くか、
抱かないかでリスナーの価値観、
大袈裟に言えば人生感までが分かってしまうかもしれないが、
私は阿部のアルトも嫌いではない。

ドルフィーを楽しめ、
なおかつ阿部薫理解の手助けになるかもしれないという、
興味深い1枚。

前半の2曲、
《ジターバグ・ワルツ》と
《ミュージック・マタドール》は、
後半の2曲と比べれば、
比較的聴きやすい大人数編成のアンサンブルだ。

あけっぴろげの無邪気なメロディのアンサンブルは、
単純に明るいニュアンスだけにとどまらず、
どこか不気味カワイイところもあり、
聴き手を複雑な笑顔に誘うことだろう。



▼現在入手可能なものは
 『カンバセーションズ』と
 『アイアンマン』のセッションが
 カップリングされたものになる




[THE ERIC DOLPHY MEMORIAL ALBUM]

1.Jitterbug Waltz
2.Music Matador
3.Alone Together
4.Love Me

 Eric Dolphy (as,bcl,fl)
 Woody Shaw (tp)
 Huey Simmons (as)
 Clifford Jordan (ts)
 Prince Lasha (fl)
 Richard Davis (b)
 Eddie Khan (b)
 Bobby Hutcherson (vib)
 J. C. Moses (ds)
 Charles Mophet (ds)








▼高野 雲 HP「カフェ・モンマルトル」
 http://cafemontmartre.jp/

▼【Jazz Magazine】《ジャズのメールマガジン》
 http://search.mag2.com/reader/Magsearch?keyword=61881

▼ジャズBLOG「快楽ジャズ通信」
 http://ameblo.jp/jazzy-life/
posted by 雲 at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする